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〜亡きご主人の意思を継ぐ〜

「愛犬と暮らす ルーフデッキの家」

 

村松家の愛犬アスカは6歳のコリー犬である。1歳の時に家族の一員となった。コンクールで上位に入賞した実績をもつ、美しい毛並みのコリーだ。

その昔、白黒テレビが日本に普及しはじめた頃、『名犬ラッシー』というドラマが人気を博し、主人公であるコリーの名前が全国に広まった。日本人にとってコリーは最初に知った洋犬名であろう。

コリーはもともと牧羊犬だが、家庭犬としても世界的に人気が高い。外見は力強く、しなやかで美しい。さらに、性格も穏やかで優しく、飼い主に忠実な気質を兼ね備えている。万人に愛される犬種の一つだ。

そんなコリーと暮らせる住まいを岩手県盛岡市に訪ねた。

 

飼い主に忠実な愛犬

 

村松家の愛犬アスカは、とても躾が良い。目の前に餌があっても飼い主の許可が出るまでは食べない。また、家族の一員になったときから玄関が居場所になっていて、決して家の中に上がり込むことはなかった。

しかし、たった一度だけ、玄関の土間を超え、家の中に入ったことがある。

それは2003年秋の夕方、奥さまが仕事から帰ったときのことである。いつもは玄関の土間にいるはずのアスカがいない。不思議に思い奥さまは居間へ行ってみると、畳の上におとなしく座り込むアスカの姿があった。そして、アスカの目の前には、あろうことか、ご主人が脳出血で倒れていたのである。アスカが異変に気付き駆けつけたのか、あるいは、ご主人が薄れいく意識の中でアスカを呼んだのか、真相は不明だが、倒れたご主人のすぐそばに心配そうに寄り添う愛犬アスカがいたのだ。

その後、ご主人は救急車で病院へ運び込まれ、およそ一週間の昏睡状態のあと、静かに息を引きとった。

 

亡きご主人の意思を継ぐ

 

生前、村松さんのご主人は家の建て替えを検討していた。市役所の定年退職を数年後に控え、愛犬と暮らす「終いのすみか」を望んでいたのである。当時、設計を担当していたのは、盛岡市内に設計事務所を構える翼プランニングの三浦さんであった。設計の打合せは全てご主人が一人で行っていたため、ご本人が他界された時点で、建築計画そのものが頓挫したものと三浦さんは思っていた。

ところが、ご主人が亡くなられてから数ヶ月後、奥さまから三浦さんへ意外な言葉が伝えられる。「主人の意思を継いで家を建て替えたいと思います」と…。

ご主人は財布に三浦さんの名刺を入れて持ち歩いていたことや、たくさんの建築計画のメモが出てきたことなどから、ご主人の供養のためにも家を建て替えることにしたといぅ。

2004年の秋、一周忌を過ぎたころ本格的に建て替えの計画を再開することになる。

 

想いの詰まったプラン

 

記者も建築家として、これまで多くの住宅設計に携わってきたが、家を建て替える動機が「供養のため」という経験はない。今は亡きご主人のために、設計者へどんな要望を出したのか?建て主の村松さんへ率直に聞いてみた。

「基本的な間取りは、生前主人が三浦さんと打合せしていましたので、そのままの間取りで建てようと思いました」と村松さん。

「ただ、いくつかの要望を追加しました。…主人の仏壇は家族の集まるリビングの中心に配置したいこと。そして、愛犬のアスカの居場所を仏壇から見渡せる場所に設けてほしいこと…」

記者は言葉に詰まった。

室内を見渡すと、確かに仏壇はリビングの出窓の並びに埋め込んであり、ご家族の生活の中心に配置されている。正面には、柵ごしに愛犬のスペースが見える位置だ。亡きご主人の居場所がしっかりと設えてある。まさに村松さんご家族のご主人への想いを強く感じさせるプランになっている。

「各個室の床面積は必要最小限としながらも家族の集まるリビングだけは縦にも横にも広がりを感じるよう心掛けました」

設計を手掛けた三浦さんのお話どおり、解放的で広く明るい空間だ。

「ここが主人の部屋なんです」と話す村松さんの目は優しさに包まれていた。

 

設計のコンセフト

 

■ご主人の供養としてのデザイン

リビングの中心の出窓に仏壇を埋め込む。さらに愛犬の居場所が見える配置とした。

 

■大型犬のコリーと暮らしやすい住まい

一般的に「コリーは家族と一緒に過ごすことを至上の喜びとしていること」、そして「建設地が寒冷地であること」などの理由から、リビングの一画に犬舎を配置した。また、大型犬の運動量に日常的に対応するため2階リビングに隣接して犬舎から直接出入り可能な12帖強のルーフデッキを設けた。

 

■明るい室内

良好な日照と通風を目指して2階リビングとした。また、1階に光を導くため、2階リビングの一部の床をポリカーボネート板とし、天窓から降り注ぐ光がリビングを通して1階廊下へ到達する工夫を施した。

 

■老後も快適に過ごせる「終いのすみか」

将来的にも環境の優れた2階で暮らせるようにホームエレベーターを設置している。

 

■冬暧かい住まい

蓄熱式暖房機による全館暖房とした。「家中暖かくて満足していますが、当初、季節の変わり目の温度設定が難しかったです」と村松さん。

 

設計に盛り込んだ主な建築材料等

愛犬と暮らすための工夫

■消臭効果のある内装•貝殻漆喰(チャフウォール)。ペットの臭いを消す目的で採用した貝殻漆喰だが「オープンキッチンの料理の臭いまで消してくれて、とても快適です」と喜ぶ村松さん。

■居間に犬舎を設ける•床材にFRP防水。

 

家づくりの具体的な内容•要望

■以前の家は日当たりが悪く昼間でも照明を必要とするほど暗かったので、とにかく明るく。

■盛岡は冬の最低気温がマイナス10度を下回る極寒の地だが、暖かく過ごせるように配慮する。

■車3台分の駐車スペースが必要。

 

ルーフデッキが庭の代わり

 

日本のように敷地や床面積が狭く、しかも土足ではない生活環境で、大型犬のコリーと暮らすには様々な工夫が必要になる。村松さんのお宅では、愛犬とどんな日常生活を送っているのだろうか。

「約1時間の散歩を毎日2回欠かしていません。大変ですけど、コリーにとっては大切な日課ですし、飼い主にも良い運動です(笑)」と村松さんは前向きだ。

もともと牧羊犬だったコリーは、かつて従事していた牧羊作業でかなりの運動量をこなしていた。そのため家庭犬として飼育する場合は、長めの散歩やジョギングなどを毎日欠かせない。可能ならば広い庭を作り、家にいるときも自由に走りまわって必要な運動量を補えればいいのだが、日本の住宅事情では難しい。そこで、設計する際にどんな工夫をしたのかを三浦さんに聞いてみた。

「大きな庭があるのが理想ですが、村松さんのお宅は敷地面積が約5 8坪です。そこに車3台分の駐車スペースが必要でしたので、庭の確保は困難でした。加えて南側隣家の日影の影響や通風にも配慮が必要な敷地条件でした」

と当時の設計条件を振り返る三浦さん。

「まず限られた空間を最大限活用するために2階に庭を設けようと考えました。リビングを2階に配置し、日照と通風を確保します。さらに車庫の屋根部分に大きなルーフデッキを配置しました。およそ12帖強のルーフデッキが庭の代わりです」

と笑みを浮かべながら三浦さんはさらに説明を加えた。

「コリーは家族と緒に過ごすことを至上の喜びとしていますので、リビングの一画に犬舎を配置しましました。リビングの一部の床仕上げをFRP防水とし、その周囲に柵を廻して犬舎を作りました。ルーフデッキへは犬舎から出入りできる配置です。また、散歩に出掛けるときはルーフデッキから外部階段を使って、直接外へ出られるように考えました。」

リビングに犬舎とは面白い。盛岡市内は冬季の最低気温がマイナス10度を下回る極寒の地だ。家族の一員である愛犬への防寒対策としても有効な手段であろう。飼い主が不在となる昼間はルーフデッ キがアスカの居場所になっているが、天候の悪い冬場はリビングの犬舎で過ごしているらしい。

 

入居されて3年目

 

竣工してから今年で3度目の春を迎える村松さんのお宅。入居してからの満足度を聞いてみた。

「正直なところ満足度は80%くらいです。施工を担当した一部の専門工事業者に多少の不満が残りますが、設計者の三浦さんには100%満足しています」

と、ご長男の敬之さん。20%の減点分は、内装の仕上げに若干のムラがあり、職人さんの腕に対する不満だという。

「ただ設計に関しては、私たちの要望のほとんどを満たしてもらい本当に感謝しています。前の家は、昼間でも照明を点けないと薄暗いリビングでしたが、今度の家は、全体が明るくなりました」と村松さんは嬉しそう。

同じ敷地なのに以前と比べて格段に室内が明るくなったという。以前の住まいと、どこが違うのか設計者の三浦さんに聞いた。

「まず、良好な日照と通風を得るために2階にリビングを配置したところが大きな違いです。リビングにはハイサイドライトや天窓を設けて、より明るくしました。また、1階に光を導くために、2階リビングの一部の床をポリカーボネー卜板として、天窓から降り注ぐ光がリビングを通して1階廊下へ到達するように工夫しました」

1階は個室3室と浴室などがあり、2階には奥さまの部屋とリビング・キッチンなどが配置されている。2階にリビングを設けると階段の上り下りなど、老後の生活が不安になるが、村松さんのお宅ではホームエレベーターを設けることで将来に備えている。

 

家族の成長や変化が節目に

 

村松家の住まいの歴史には3度の大きな節目があった。結婚されてから現在までの住まいの変遷について伺ってみた。

「最初は結婚して2年目に分譲住宅を購入しました。持ち家住まいのスタートです。そこで8年ほど暮らしましたが、子育てのため主人の実家に近い場所へ住むことになり、今の土地に中古住宅を購入しました。これが2度目の節目です」と話す村松さん。

「そして今度は、主人の他界です。いま振り返ってみると、すべて家族の成長や変化がキッカケになっているのがわかります」

建売住宅や中古住宅に2度住んでみて、次は注文住宅を建てたいという思いが強くなっていたという。実は三浦さんと出会う前、ハウスメーカーにもプランを作ってもらったことがあるとか。

「あるハウスメーカーの提案は、単に2階に居間を配置してあるだけで、ほとんど工夫がなく、犬への配慮も足りないと思いました。幾度かハウスメーカーと打合せを行っているうちに不満が募り、次第に設計事務所に頼むことを考えるようになっていました」

建て替えを考えはじめてから数年間を家づくりの勉強に費やして、最終的に三浦さんに辿り着いたという。

ひとむかし前までは、犬は外で飼うのが一般的だった。小型犬ならまだしも、コリーのような大型犬と室内で暮らすのは、ドラマか映画の世界の話…夢だったはず。

村松さんのお宅は、特に大きな敷地でもなければ、大邸宅でもない。住宅としてはごく普通の規模だがコリーと共に、豊かに暮らせる環境を手に入れることができた。

「アスカは家族の一員です」と言い切る村松さんの愛犬への深い愛情と、亡きご主人へのご家族の想いが、難題を克服する原動力になったに違いない。

 

工事金額は建て主と各工事を請け負った専門工事業者が契約を交わした金額。分離発注方式では、工事が完了した部分から工事費の支払いをする必要がある。建築士が出来高により査定をして建て主に報告を行い、建て主が専門工事業者に直接支払いを行う。支払い額は支払いを行った月ごとに集計したもの。工事金額と工事実績金額に差があるのは、工事中の設計変更等によるもの。

外部サッシはアルミサッシ(トステム(株))と樹脂サッシを採用。樹脂サッシはクレトイシ(株)社製のニューキャッスル。北米(力ナダ)でデザインされ、北海道で生産している。サッシ枠は赤•青などアルミサッシではあまり見られない種類がある。また、一般的なペアガラスは中間層に乾燥空気が充填されているが、このサッシにはアルゴンガスが充填されたペアガラスがはめ込まれている。アルゴンガスは乾燥空気に比べ熱を伝えにくいという性質を持つので、断熱性能が高くなる。

 

洗濯・掃除・キッチンの動線を主婦の視点で

 

掃除はしやすそうですか?置き家具が多いと隙間にホコリがたまります。掃除道具の置き場や雑巾を洗うシンクの位置に問題はありませんか?

家事の中で最も移動距離の長いのが洗濯です。洗濯機で洗う→干す→取り込む→アイロンを掛ける→クローゼットにしまうという一連の作業を追って、動線をチェック。階段を昇ったり降りたり、ドアをいくつも通り抜けたりでは不便です。雨の日の物干しはどこにするのかも確認。

調理は食材の買い出しシーンからスタートです。玄関から入るか、勝手口がほしいか。冷蔵庫と食品庫の大きさはOKか。家電の置き場はあるか。食器戸棚は配膳に便利な位置にあるか。配膳スペースにゆとりがあるかも要確認です。キッチンへ出入りするルートが複数あると、来客時でもリビングを通らず出前を受け取れるなど、気を使いません。生ゴミと分別ゴミを出すまでの置き場所確保も忘れないようにしましょう。

 

生活動線と家事動線をスムーズにした成功間取り

 

2階がブライベートな居室、1階がバブリックスなLD+和室、水回りというコンパクトなプラン。帰宅したら2階で着替えを済ませ、LDでくつろぎます。

 

家族のくつろぎを演出

リビング・ダイニングのプラン

 

くつろぎのシ—ンと食のシ—ンは。家族のコミュニケ—ションを育むもっとも大切なステージです。我が家にふさわしい理想のスタイルを思い描いてプランしましょう。

 

はじめにLDKのつながり方を決める

 

調理をするキッチン、食事をするダイニング、団らんのためのリビング。機能はそれぞれ違いますが、暮らしの中では密接なつながりが。それを形にすると下のようにタイプに分けられます。

たとえば、食事を作るところから家族が積極的に手伝う家庭では、DKをひと続きにするとよいでしょう。食べることが好きで来客も多いなら、広々使えるようLDは一緒のスペースに。食後は気分を変えて過ごしたいと思うなら、リビングを独立させた方が落ち着きます。これは応接間を兼ねて、リビングにフォーマルな印象をもたせたい場合にもふさわしいタイブです。目的をはっきりさせて選んでください。

 

LDはこのスタイルが基本

 

LDタイプ

キッチンが独立しているので、調理の臭いや煙が気になりません。食事から、食後の団らんへの移行はスムーズです。

 

DKタイプ

キッチンとダニングが同室なので、配艤や片付けがラク。食のシーンを家族で存分に楽しめます,

 

LDKタイプ

LDKをコンパクトにまとめられるため、小住宅でも採用可能。調理や片付けの間も子ども達の根子を見守ることができます

 

独立タイプ

それぞれの部屋の独立性が保たれ、落ちついた空間づくりが可能です。ただ、敵地面積に余裕がないと、圧迫感が出ます,

 

ゆるやかにつながるLDK

眺望を大切にし、2険にLDKを配置。対面式キッチンからLDが見渡せます。薪ストーブのあるダイニングとリビングはL字型で、ゆるやかなつながりを保っています。

 

人が集まる仕掛けを考えておきたい

 

LDは家族のコミュニケーションの要となる場所です。外出するとき、帰宅したとき、それぞれの個室へ移動するとき、LDを通る動線とするのか、声が聞こえる、姿が見えるなど気配が伝わる配慮をするのか、ほかの部屋とのつながりも考えて計画しましょう。

思春期を迎えた子どもが自室にこもってしまわないよう、LDは家中で一番居心地のいい場所にしたいものです。吹き抜けを設けたり、天窓(トップライト)や高窓で採光と通風を図ったり。LDに接した庭を取り込むようにインナーテラスを設ける、ウッドデッキを広げるなどすれば、アウトドアでのお茶やバーベキューを手軽に楽しむことができます

「火」も人を集める重要な小道具に。リビングに薪ストーブや暖炉があれば、雰囲気を盛り上げてくれます。AV機器を充実させホームシアターを兼ねる、みんなで使えるパソコンを置くなど、我が家なりのテーマを用意してみましょう。

また都市の密集地では2階にLDKを配置するプランもおすすめです。通風、採光が図られて見晴らしもぐんとアップ。1階に個室が集まることで1階の壁が増え、構造が安定するというメリットもあります。ただ、食材を運んだり ゴミを出したりするために上下移動が頻繁になります。階段をゆるやかにする、ゴミを一時的に置いておくサービスバルコニーを設置するなどひと工夫は必要です。

 

上下階でつなぐLDK

1睹にキッチン&ダイニング、2階にリビングというユニークな発想。オープンな階段と吹き技けでLDは十分気配を伝え合っています。2階リビングからは緑豊かな風景が臨めます。

 

出勤時と帰宅時、洗面や着替えはスムーズ?

 

毎日の行動がスムーズにできると住まいの快適度は格段にアップします。まずは夕方帰宅したときの様子を図面の上でシミュレーションします。起床、洗顔、着替え、食事、出勤。帰宅、着替え、食事、入浴、就寝などルートを順番にたどりながら、部屋同士の配置が家族の行動パターンとあっているかどうか確かめてみましょう。

浴室から寝室に行く際にリビングを通るルートだと、来客時に困ることがあります。適切な場所にグローゼットが配置されていなければ、リビングにコートが脱ぎっぱなしになったり、湯上がりにバスタオル姿でウロウロ、なんてことになりかねません。

大所帯の場合は、争いにならないよう洗面室を広めにとり、洗面ボウルを2個に。トイレも上下階に1つずつ用意しましよう。さらに防音材などで、上階のトイレの音が、下階に伝わらない工夫をすることでより快適な暮らしを実現できます。

 

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